【伊祖高地の戦い】
嘉数高地で大激戦が展開されていた4月18日、米軍は第一防衛線西端の攻略を開始します。
米軍は煙幕に紛れて牧港河口を渡河する事に成功、伊祖高地の崖下に集結します。
米軍は日本軍の文書を手に入れており、そこには「米軍は夜間は射撃はするけど夜襲は行わない」と書かれていました。
米軍はこれを逆手にとって闇夜に紛れて崖を登って夜襲をかけ、日本の警備兵を一掃します。
19日、米軍は伊祖付近の日本軍守備隊に対し攻撃を仕掛けます。これは日本軍にとって奇襲となり、伊祖高地より北側の稜線は米軍に占領される事になりました。
しかし第一小隊は「ほぼ全滅」、第二小隊は「生存者なし」と高地へたどり着くことはできませんでしたが、第三小隊伊祖北側高地へとたどり着く事ができ、独立臼砲第一連隊と合流する事に成功します。
21日から22日にかけて両軍の死闘が繰り広げられ、日本軍はなんとか米軍の進出を阻止する事ができていました。
23日には激しい白兵戦となり、30分の戦闘で100名以上の日本兵が戦死します。
その夜、日本軍は30名の残存兵力で敵前線へ突撃して全滅。
伊祖高地での戦闘が終了し、米軍は戦力を激戦地区の「嘉数」へ集中させる事ができるようになりました。
沖縄第一防衛線はこれによって完全に崩壊する事になり、沖縄戦は「第二防衛線」を守る戦いへと移行していく事になります。
【城間の戦い】
19日に牧港河口の渡河に成功していた米軍の中には、伊祖高地攻略とは別に、そのまま西進して「城間」の攻略に取り掛かった部隊もありました。
城間には米軍に「アイテムポケット」と呼ばれた強固な地下要塞があり、米軍は城間北部の高地にたどり着くことができずにいました。
アイテムポケットは激しい砲爆撃にも耐え、米軍が接近すると機関銃、迫撃砲、手榴弾が雨あられのように降り注ぎ戦車すら忽ちにして破壊される地獄と化すのです。
米軍は多数の死傷者を出しながらも、四方八方から包囲して攻撃を加えることによって27日にようやく攻略に成功します。
陸軍のあまりにも遅い侵攻速度によって連隊長が解任されるなど、米軍にも焦りが見え始めてきました。
【宮城・仲西の戦い】
このような状況の中、当初は沖縄本島北部を担当していた米軍海兵隊も、陸軍の負担軽減のため西海岸へ投入される事になります。
日本軍は戦力の充実した新たな部隊の遭遇に、更なる苦戦を強いられるのでした。
4月30日、城間を少し南下した場所にある、宮城地区以西の陸軍南飛行場へ米軍海兵隊が進出してきましたが、日本軍はこれに激しい砲撃を加えて撃退します。
5月1日、今度は米軍は戦車を伴って攻撃を加えてきます。
米軍は宮城地区の民家を徹底的に破壊し占領しますが、日本軍の抵抗は執拗で、この日も結局撤退せざるをえませんでした。
しかし2日以降、米軍の激しい攻撃によって数日間に渡る一進一退の激戦が続いた末、5月6日には安謝川北岸までの一帯は完全に米軍の手に堕ちる事になったのです。
【前田高地の戦い】
前田高地は第二防衛線の中央部にあたる要衝でしたが、新鋭の部隊が配備されておらず、第一防衛線の嘉数や西原から後退してきた部隊が守備についていました。
さらに前田高地は後方兵站部隊や司令部が置かれていたため、戦闘のための防御機能を有した陣地が構築されていませんでした。
しかし米軍にしてみれば、そびえ立つ前田高地の岸壁「為朝岩(ニードル・ロック)」を制覇する事こそが、沖縄攻略、日本本土攻略への第一歩であると象徴づけられており、前田高地の戦いこそが沖縄戦の勝敗を決定づける大事な一戦であると位置付けられていました。
4月26日、周到な事前砲撃を終えた米軍は、前田高地に対し正面から攻撃を仕掛けます。
米軍の歩兵隊は無傷で前進する事ができましたが、岸壁を登り終えた直後に猛攻撃を受けて一気に18名が戦死する事になります。
日本軍は防御機能の未熟な前田高地を、反斜面陣地として活用したのです。
米兵が崖を登り終えて稜線に辿り着くたびに戦死者が出るため、米軍は思うように侵攻する事ができなくなってしまいました。
前田高地の頂上をめぐる戦闘はその後も数日に渡って行われ、両軍とも大きな損害を被りました。
米軍の第381連隊は戦闘能力が40%にまで低下、1000名を越える死傷者のうち半分はこの前田高地の戦闘によるものでした。
米軍の砲爆撃が行われている間は南側の斜面の陣地に隠れてやりすごし、北側斜面を登ってきた米兵が頂上に現れると壕から出て攻撃を仕掛ける、という戦法をとってきた日本軍でしたが、5月4日、日本軍は総攻撃を行い600名が戦死するという大損害を受けてしまいます。
米軍は日本軍の地下陣地を爆破しながら南下を開始、前田高地の戦闘は6日に集結します。
この戦いの最前線で活躍した衛生兵のデズモント・T・ドスは名誉勲章を授かる事になり、2016年には彼を題材にした映画「ハクソー・リッジ」が製作されています。
0 件のコメント:
コメントを投稿